サイト内検索:

外為リアルタイムレビュー: 2010年8月14日バックナンバー

2010年8月14日バックナンバー

ドル円、政策要求相場の色彩を強めた後の展開は?

こんばんは。

先週のドル円相場は週央に一時84円71銭と、約15年ぶりの安値を記録した後に1円50銭以上反発し、週足は3週間ぶりの陽線引けとなりました。1週間の動きを振り返っておくと・・・

【月曜日】
週明け東京の早朝は85円30-40銭台。米追加金融緩和観測を背景としたドル安警戒感根強いが、新規の円買い材料にも乏しく、午前中は85円40銭を挟んで一進一退。後場に入り、前週末比安寄りした日経平均が下げ幅圧縮に転じると85円60銭台まで上昇。欧州勢参入後、欧州株の堅調推移などを背景に85円70銭台まで続伸。利食いに押されて一時85円50銭台に小緩む場面もあったが、NY勢の参入が始まると再び買い優勢に。米国株が堅調に推移して一時10700ドル台を回復、約3ヶ月ぶりの水準に復帰すると米2年債利回りも0.54%前後に小反発、ドル円も一時86円00銭界隈まで上伸。

【火曜日】
東京早朝は85円90銭台。仲値決済でのドル需要が意識され一時86円06銭まで上昇するが、高寄りした日本株が上げ幅圧縮に転じると85円68銭まで反落。野田財務大臣、荒井経財相、直嶋経産相の円高牽制発言3連発で85円90銭台まで買い戻される。日銀金融政策決定会合は景気・物価・政策判断全て据え置き。金融緩和期待不発で瞬間85円71銭まで下落するも、FOMC前の様子見気運も根強く、すぐに買い戻されて85円90銭台に復帰。欧州勢参入後、欧州株の下落を受けて一時85円62銭まで下落するが、NY序盤に「FOMCで追加金融緩和見送り」との噂から米2年債利回りが0.56%台に急騰して86円24銭まで上昇。その後、当日満期のオプション防戦の噂などから85円80銭前後に押し返されてFOMCの結果待ち。米FOMCは「住宅ローン担保証券の償還分の米国債への再投資」を決定。FRBの債券保有額が2兆ドル強の水準に維持されることが伝わると米国債が買い戻されて2年債利回りが0.51%台に急低下し、一時85円17銭まで下落。その後、金融緩和の維持を好感して米国株が下げ幅圧縮に転じると2年債利回りが0.52%台に小反発して85円30-40銭台に買い戻される。

【水曜日】
東京早朝は85円40銭前後。手掛かり材料難の中、東京時間帯は85円20-46銭の狭いレンジ内で一進一退。欧州勢参入後、時間外のNYダウ先物の弱含みや米2年債利回りの低下などを手掛かりに17時過ぎに一時84円99銭と85円台を瞬間割り込む。いったん85円28銭まで買い戻されるが、米2年債利回りが0.50%を割り込むと再び85円台を割り込み、一時84円72銭と約15年ぶりの円高ドル安水準が示現。NY勢参入後、しばらく84円台での推移が続くが、米2年国債が高値警戒感から売られて利回りが0.51%台に反発するとドル円は買い戻し優勢になり、85円台前半で様子を見ながら東京勢の参入待ちモードに。

【木曜日】
東京早朝は85円30銭前後。約15年ぶりの円高ドル安水準をみた前夜の余韻を引きずり、午前中はジリ安の展開。前場の日経平均が年初来安値目前まで下落すると円高デフレへの警戒感が強まって一時84円93銭まで下落。後場に入り、日経平均がドバイ・ショック後安値を更新すると、本邦政府要人による円高牽制発言が活発化、日銀のレートチェック報道なども相俟って、85円40銭台まで急回復して欧州勢の参入待ち。欧州勢参入後、一時85円20銭台に小緩む場面もあったが、「17:30から野田財務大臣が緊急記者会見」との報道が伝わると介入警戒感が強まって85円80銭近くまで急騰。野田大臣の記者会見で介入警戒感が剥落すると一転して急落、一時85円18銭まで押し返されるなど出入りの激しい展開に。NY勢参入後、某筋によるまとまった買いの噂などから85円60銭前後まで上昇するが、米失業保険新規請求件数が弱い結果になると85円30銭台に反落。その後、米国株の下げ幅圧縮や米2年債利回りの0.54%台への反発などを背景に85円90銭台まで上昇するが、86円手前の上値の重さを確認して東京勢の参入待ち。

【金曜日】
東京早朝は85円90銭台。お盆時期早朝の薄商いの中、良好なNZ6月小売売上の結果を受けてNZドル円が上昇するとドル円もつれ高して86円台を回復。本邦主要紙朝刊が「菅首相と日銀総裁の会談を来週実施で調整」との報道を受けた追加金融緩和期待の後押しもあって、一時86円18銭まで上伸。ただし、この水準では上値も重く、東京時間帯は85円90銭台から86円10銭台での方向感模索が続く。欧州勢参入後、米国債利子収入の円転観測が意識されたほか、欧州株価の軟調を嫌気したクロス円の下落を背景に一時85円56銭まで軟化するが、85円台半ばでの買いも手厚く85円70-80銭台に反発。21:30に発表された米経済指標は市場予想近辺で強弱相半ばする微妙な結果となったが、22:55に発表されたミシガン大消費者信頼感指数が予想を上回ると、85円90銭前後まで上昇。日本時間23:00台に入り、対円、対ユーロでまとまったドル買いの噂が出ると86円39銭まで急騰して先週高値を記録。その後は利食いに押されて小反落、86円15-30銭前後で一進一退となり、86円29銭で週末の取引を終える。

・・・という流れでした。

<ドバイショック後の円高株安局面との類似性・・・>
「米国の金融緩和長期化観測に由来するドル安圧力が強まる中で、日銀が追加金融緩和に慎重な姿勢を示して円高デフレの悪循環懸念が強まり、円高が加速して株価が急落し、政府から日銀への働きかけが強まるとドル円が反発する」という構図は、昨年晩秋のドバイ・ショック後の局面に酷似しています。その意味で先週は、まるで当時のフラッシュバックを見るようなマーケット展開でした。時間帯はやや前後しますが、先週はドル円、日経平均ともに「ドバイ・ショック後の安値」を下回る水準まで下落しました。その後、(1)本邦政府要人による口先介入の活発化、(2)日銀によるレートチェックの噂、(3)首相と日銀総裁の会談実施への思惑、などが背景になって、週末にかけて日本株もドル円も小反発しましたが、そんなところも昨年晩秋の局面とよく似ています。こうした状況を踏まえ、来週のドル円の注目点を2つ挙げておきます。

<日銀の政策対応への注目が高まる>
第一は、日本銀行による政策対応、或いはその意思表示の有無です。最近の円高は基本的には米国景気下振れ観測の所産であるため、米国景気に対する市場の見方が変化しない限り、根本的な部分での収束を期待するのは難しそうです。ただし、米国発のドル安圧力が円高デフレのスパイラル懸念を誘発していることに対する日銀の反応の鈍さが円高加速の触媒になったという印象は否めません。実際、先週末に発表されたシカゴ通貨先物市場のドル円持ち高をみると、ドル円が15年ぶりの円高を記録した8月11日の1日前の8月10日時点で、投機筋のドルショート・円ロングがついに5万枚の大台にまで膨張していたことが分かっており、先週後半の84円71銭から86円台前半までのドル円の反発劇は、「ここまで来たら日銀も何らかの金融緩和に追い込まれる可能性が高いのではないか」との淡い期待が背景になってドルショートの巻き戻しが誘発されたことによると思われます。

したがって、円高デフレの加速懸念に対して日銀が配慮する姿勢を示さない場合、ドル円は再び戻り売り優勢になって84円台に突入し、日本株の下落を巻き込む「政策要求相場」の色彩を強める可能性がある一方、ドルを借りてきてまで円を買うという類の持ち高がかなり膨張していることを考慮すると、ちょっとしたきっかけでドルの買い戻しが大きく進む可能性があります。日銀が追加金融緩和に前向きな姿勢を示すようなら、一段のドルショートの巻き戻しが促されてドル円が87-88円台に続伸する可能性も否定できません。今回の円高局面において、市場の円高マインドを加速させる触媒になったのが日銀の態度であったことを考慮すると、来週以降の日銀の出方次第で、ドル円の短期的地合いは相当程度変わると思われます。

<米国景気腰折れ・デフレ懸念の真贋論争の決着には時間がかかりそう>
第二は、米国景気の腰折れ・デフレ懸念の当否です。先週は、市場に蔓延している米国景気の下振れ観測に加え、FRBによる国債購入増額の発表が原動力になって、米2年国債の利回りがついに0.49%台の未体験ゾーンにまで急落し、15年ぶりの円高動意の基本的背景になりました。

あくまで私見ですが、私は最近強まっている米国の景気二番底懸念やデフレ懸念は、ちょっとやり過ぎだと思っています。最近の米国のマクロ経済指標を冷静に見ると、一時期待されていた程の力強さには欠けるものの、地道な回復は続いており、一言でいうなら「回復局面の中だるみ」という表現の方が妥当だと思います。ここ数カ月間に生じた米長期金利の大幅低下や、ドル実効為替指数の大幅下落は、米国経済に対して景気刺激効果を生むと思いますし、しばらく時間がたって、過剰な米国景気悲観論が和らいで来れば米国の金利もドルも上昇するのではないかと思っています。

ただし、米国経済に対する冷静な健康診断の結果が出てくるまでには、まだ数カ月ぐらいは時間がかかると思います。来週発表が予定されている米国の経済指標は、それなりに注目されているので、結果次第でドル円は素直に反応すると思いますが、来週出る一連の指標だけで、米国の景気物価情勢に対する市場の不透明感を払しょくするのは難しいのではないでしょうか。これまで同様、当面の米経済指標は玉石混淆の状態がしばらく続くと見られ、市場は是々非々の反応を強いられる状態が続きやすいと思われます。

<政策要求相場の厄介なところ>
上述のように、今回の円高・株安局面は、その背景や経緯がドバイショック後の局面によく似たところがあります。当時の為替と株価の反発は、白川日銀総裁が鳩山(当時)首相の官邸に招待されてからの日銀の態度の豹変(新型オペの導入、物価安定の理解の明確化など)によってもたらされました。菅首相が白川総裁を官邸に招待する日時はまだ未定のようですが、米国景気の劇的な好転、或いは悪化を見込み難い状況下、当面のドル円の方向感は本邦政府・日銀の出方に依存して決まり易い状況が続きそうです。

こういう相場の厄介なところは、政策対応の有無によって相場の方向感が大きく違ってくるため、合理的な根拠に基づいて日々の為替予測をするのが極めて難しいという点です。残暑厳しい日々が続く中、かなり神経を使わされる相場展開が続いていますが、「政策要求相場」が続くのか収束するのか、来週も本邦政府、日銀関係者の言動に振り回される展開になりそうです。来週もよろしくお願いします。

ご質問、ご感想などはこちらから

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
RSSで購読

カテゴリ

最新の記事

外為どっとコム